不登校保護者会

不登校の子どもを育てる保護者の会です。

フリースクールで性被害を受けた女性が訴訟に込めた思い

とても残念なことに、フリースクールという、学校から避難してきた子どもの居場所で性被害が起きてしまいました。

 

www.asahi.com

 

学校で居場所を失った子どもが、さらに追い詰められるようなスクールセクハラは、絶対に許されません。

 

原告女性からのメッセージ

和解後の記者会見で、原告女性は次のように述べました。

このような辛く絶望に満ちた人生を背負わされる人を、もう一人も出してほしくないという思いでご報告をしています。

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性的虐待の後遺症によって人生を壊された

私はこの性的虐待によって人生を壊されました。

その結果私の人生に生まれたのは、世界は安全ではないという絶望、信頼できるはずの人から最悪の虐待を受けたことで深く刻み込まれた人間不信、時間・場所など関係なく起きる被害当時のフラッシュバック、突然動かなくなる身体、性的暴行という耐えがたい経験を乗り切るために“辛い気持ち”を自分から切り離したことでバラバラになってしまった人格、何をしても遠い世界の出来事のようで現実味を感じられないなどの後遺症です。

虐待そのものの傷と二次被害による傷で、自分は生きている価値などない人間で、早く死んでしまわなければならないという強い思いを常に感じるようになりました。今日一日自殺しないで終えることを目標に過ごさなければならないような毎日を過ごしています。 

 

加害者側を持ち上げるメディアに耐えられない

原告の女性は、裁判中も加害者側のフリースクールやその関連法人などがメディアに出てくる度にパニックを起こし、激しいフラッシュバックや、「解離」という症状で自分の意思では身体が動かせなくなったり、自殺したい強い衝動にまで襲われていたそうです。

裁判が終わった後もこのようにメディアで見かけるんだろうと思ったり、その度に症状が悪化していくことを思うと、この先どうやって生きていけばいいのか…と恐怖や絶望感に飲み込まれてしまいそうです。

 

苦しみを理解してもらえた実感はない

この4年半という長い期間法的に争ってきた中で、私が当初伝えたかった、被害当時に感じていた苦しみや、被害後も一生続く後遺症の苦しみ、一人の人間の人生を壊したのだという重みを理解してもらえた実感は正直ありません。加害者側だけでなく、裁判所としても、被害の実態や後遺症の重みを理解していただくのはまだまだ難しい時代なのだなと痛感しました。

 

裁判をしたことにより受けた新たな心の傷も多々あり、その度に死んでしまわないよう心の応急処置に追われる日々でした。

加害者側からしたら裁判で終わりかもしれませんが、治療法が確立されていない後遺症を負わされた私にとって裁判はただの通過点でしかありません。

  

それでも訴えを起こした自分は「無力ではない」

それでも法的に訴えを起こし、自分にできる限りの事をし尽くして闘った経験は「自分は無力ではない」という記憶も残してくれました。

また、裁判をしたことで多くの方からあらゆる方法でご支援をいただきました。

  

子どもの頃から「この被害について私の味方になってくれる人など誰も居ない」と感じ、一人で抱えてきた私にとって、一緒に闘って下さる方々の存在を感じられた経験は裁判の結果に勝る宝物になりました。

性的虐待を受けても法的に争うことさえ難しい時代に、このような貴重な癒しの経験をさせて下さった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

 

 

教育現場やマスコミは「なかったこと」にしてないか?

私たちは10月11日に行われたフラワーデモ東京で、次のようにスピーチさせて頂きました。  

 

事件があったフリースクールからも、加盟するフリースクール全国ネットからも、監督責任があるにも関わらず、事件後も裁判後も以前と変わらず具体的対策を示さないままです。

 こうして保護者や子どもの不信感を置き去りにしたまま、性加害事件を起こした民間フリースクールが、自治体と協働で子どもの居場所を設けたり、文科省の専門家会議の委員に任命されたり、NHKや新聞各紙・SNSなどでフリースクール促進キャンペーンが繰り広げられている現実があります。

 

スクールセクハラという教育現場の性被害は、圧倒的な力の差を背景にした搾取であり、性差別であり、子どもの人権の蹂躙です。

絶対にあってはならないことです。

 

不登校の子どもと保護者は、このような状態では安心して子どもの居場所を利用することもできません。不祥事が続く学校にも戻れません。だからこそ教育現場では、関係者が性被害を受けない、誰もが加害者にならない仕組みが必要です。

 

子どもの居場所づくりは、民間のフリースクール事業者が、地域や自治体、学校に参入する形で急拡大しており、スクールハラスメントを防止する人材育成や支援の質をどう確保するのか、早急に対策を講ずるべきです。

 

私たちの要望は、不登校、不登校傾向の子どもたちだけでなく、教育現場にいるすべての子どもの人権に関わる重要な問題です。

 

子どもの人権が学校で守られていないことが

スクールセクハラや不登校増加の原因です。

子どもの人権を大切にする社会に変えていきましょう。

 

さらに、私たちは原告女性が提言された「子どもと親への推薦図書」を、会員有志とともにネット上で読書会を開催して読み合わせ、下記のとおり書評と感想を公開しています。

 

当該フリースクールは、各自治体から委託を受けて「親の会」を開き、行政や議員から不登校児の保護者代表のように扱われているばかりか、文部科学省の専門家会議など国の政策決定にまで多大な影響を与えています。

 

私たちは、不登校の子が逃げた先で起きた「スクールセクハラ」を決して黙殺せず、加害側の教育関係者・支援者やメディアによる二次被害にも抗議し、実効性のある具体的な再発防止策を訴えていきます。

 

hutoukouh.hatenablog.com

 

なお、原告女性による推薦図書のリストはNHK「クローズアップ現代+」のサイトでも紹介されました。

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【性暴力を考える vol.39】子どもが性被害に遭ったとき 私は・・・ 2人の親の思い - みんなでプラス - NHK クローズアップ現代+

※番組の取材に応じた親子は裁判の原告女性ではありません。