不登校の子どもを育てる保護者のみなさんへ 川崎殺傷事件後の子育てについて
不登校の子どもを育てる保護者の皆さんへ
川崎殺傷事件後の子育てについて
神奈川県川崎市で起きた事件につきまして、被害に遭われた方、関係者の方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
私たちも子どもを育てる親として、事件の残虐性に強い怒りと悲しみを感じています。このような事件は、どんな理由があろうと決して許されるものではありません。
残虐な犯行についての報道が続く中、川崎で起きた事件と不登校を絡めて、子どもを甘やかすな、無理をしてでも自宅から引きずり出せ、なんとしても登校させろというような言葉が教員を自称するTwitterアカウントから発信されることが増えています。我が子への対応について迷う保護者も多いと思います。
以下は2016年に文科省から各学校への通知です、
「不登校は問題行動ではありません。」
不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し,学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが,児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要であり,周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待されています。
引用終わり
不登校を特集したNHKスペシャル
この番組放送後や川崎事件後に巻き起っている不登校の子どもに対する偏見に対して、不登校保護者会として、学校に行っていない子どもや登校に辛さを感じる子どもへの対応を知っていただきたいと、不登校保護者会メンバーの声をまとめました。
- 不登校の子、登校をためらっている子に対して、頑張って行かせる、無理して登校させる、引きずってでもつれていく、登校すればインセンティブがあると示すなどの登校刺激は、子どもの心の傷を酷く深める可能性があります。
- 川崎事件にからめての説教や説得をしないで下さい。
- このままだとあなたはあの犯人みたいになるかもしれないなどという語りかけを不登校の子どもにしてはいけません。
- あなたのことを心配して言っているの!という言葉かけもしないで下さい。あなたが心配という言葉は、自分の心配の押し付けです。自他境界線とモラルハラスメントの問題を丁寧に考えていくことが大切です。
- 「今のままだと◯◯になっちゃうよ」と脅すと、良い結果を生みません。
「こんなんじゃ引きこもりになっちゃう」
「こんなことでは親のカードで勝手にネットショッピングをするようになる」
「このままじゃ◯◯中毒になる」などこのような言葉かけをしてしまうと、
呪いでもかけられたように心に負担がかかるお子さんもいます。
- 学校に行かないからといって、子どもの玩具やネット、ゲームを取り上げるのも逆効果です。もっと危険なものごとへの依存につながります。不安や自己肯定感が低下している要因の解消なしに依存しているものを強制的に取り除くと、ほかに依存するものを変えるか、命の危険があります。その子の不安や自己肯定感低下の原因を取り除くのが先です。
- 不登校のロールモデルを子どもに示す危険性について、不登校保護者会としては、注意喚起しています。学校に行かないなら一芸に秀でる必要がある、学校に行かないなら、特別に活躍しなければならないなどの示唆をしないで下さい。お子さんの気持ちを大切に夢を育てることが大切です。有名にならなくては、活躍しなくてはと、プレッシャーをかけることは、子どもを追い詰めてしまいます。
- 不登校についてのNHKスペシャルで取材対象となった学校では、不登校傾向の子どもに修学旅行参加を促していましたが、これは、とても危険です。
- 学校に行くのが辛いと感じる子どもたちは、とても繊細で保護者思いの子も多いです。
- 歴史に興味があるから修学旅行になら行く、テストだけなら受けるなど、教員や保護者の期待に少しでも応えようと、過剰適応という行動をするお子さんが少なくありません。子どもの特性を見極めて、無理に登校や行事、試験などへの参加を求めたり、背中を押したりしないで下さい。そのあとに数年寝たきりになるケースもあります。
- NHKスペシャルの事例にありましたが、別室登校の子どもに教室復帰を目標にしてはいけません。別室登校しているだけでも精一杯、ギリギリの状態です。教室復帰したいかどうか、子どもの意志を大切にして下さい。
- 医療的な診断や発達検査の結果を学校や担任が無視するのは、人権侵害です。また結果を逆利用して学校から排除するのも憲法違反です。診断を家族以外に公表したいかは、子どもの意志が大切です。
- 子どもによっては学校を変われば元気になる子もいますが、学校を変えたり住む場所を変えたりすると深刻なダメージを受ける子もいるので、不登校に理解のある地域に移り住むことが一律に勧められるわけではありません。
- 登校したりしなかったりが続くことで、学校が痺れを切らして「もう来るな!」と宣告するケースもあります。そのような対応は脅迫であり、子どもは深く傷付き、学校が完全に怖くなります。「自分には価値がない」とふさぎ込み、回復までに数年から10年以上かかるケースもあります。
- 不登校の子どもに対して、IQのみで子どもを理解する、クラス分けするというシステムは馴染みません。IQスコアという単一指標だけでは理解も対策もうまくいきません。検査の領域間のギャップなどを丁寧に分析出来る専門家が配置されているわけではない現状で、平均スコアもしくは低いスコアのみにとらわれて、子どもを教育機会から排除しようとする教員が存在します。子どもの能力を適切に判断出来る専門職が足りていません。
- LDの可能性のある子に無理やり書くことを強要したりノート作らせたりを頑張らせるのではなく、手書でなくてもOK、板書写すなど困難な場合は写メOKな学校も増えているので、あらゆる学校の先生方には、柔軟に考えて頂けるよう、交渉していきましょう。
- 教師が義務教育の義務を取り違えているケースもあります。子供は学校に行く義務があって、学校がある時間に外を歩いていたらおまわりさんに補導されちゃうよ、と教員が子供に話すという報告がありました。このケースは、保護者がその場にいて指摘訂正をお願いしました。
- 五月雨登校の子どもを担任が学校へ引きずっていこうとし、子どもが担任に不信感を抱いて完全不登校になるという事例は、保護者の間では頻繁に起こる事件として認識されています。子どもが自身の意志で動き出すのを待つという姿勢が必要です。
- 不登校の児童生徒の苦悩について学校側は配慮がなく、教員自身が職場でうけた被害(自身の評価が下がる)と考えるところに、問題の根っこの一つがあると主張する保護者も多いです。
最後に、保護者は不登校中の子供とほどよく距離を置いて、時々、自分自身の息抜きをして下さい。
2019年6月3日
不登校保護者会