VERY不登校特集への不登校保護会としての感想をめぐって
不登校保護者会Twitterアカウントからの一部の書き込みでフリースクール在籍者やフリースクール出身の皆さんの不登校体験軽視と受け取られかねない部分がありましたことをお詫び申し上げます。
VERYの記事の感想でお伝えしたかったことは、以下の通りです。
VERY不登校特集p233-236レポ。
p233 学校に行きたくないと子にいわれた読者の多様な声。
p234-235 シューレ奥地氏の不登校概観。確保法、適応教室、フリスク、私立、チャレンジ入試、通信制高校について。
p236 東大ロケットプロジェクト紹介、企画ライターの不登校経験。不登校クラスタには既知情報ばかり。
教育制度や問題への切り込みはない、
不登校になったばかりの家庭向け初心者カタログであり、周りに不登校保護者繋がりがない母親にとっては疎外感から救われる効果があるでしょう。
担当ライターが不登校経験者というのも好感が持てました。
しかし、苦しい不登校家庭にとってはぬるい企画で物足りなさを感じます。
一方、不登校を既に楽しんでいる家庭は、もっと先に歩み出しています。
記事が編集部起案かパブリシティかというと、インタビューメイン企業のパブリシティ記事ではないでしょうか。
不登校になってからフリースクールに行けるまで、時間がかかる子は多く、登校出来ないからフリースクール行こうと、すんなり行ける子どもの方が少ないのです。
フリースクールに行ける段階の子やもともと問題なくフリースクール行ける子達は比較的レジリエンスが高い子どもたち(Pines,1979)なのではないでしょうか。
レジリエントな人(Wolin&Wolin,1993)は、自分を支えてくれる人との関係を作り、家庭が機能しない時にも家庭と距離を置く能力がある。これは、自分を含む環境を客観視できる人たちであり、適切に自分をコントロール出来る認知的な力、メタ認知の発達がみられます。(Lösel,1994 )
実際、フリースクールに行ける子も多様です。レジリエンスが弱いけど時間をかけた回復段階の子も。保護者が自身の子どものために立ち上げたコミューン的フリースクールも地域によっては存在しています。
しかしながら現状フリースクール利用率は、1から2%程度。なぜ、98%の不登校の子がフリースクールに行けないのでしょうか。
シューレが運営する不登校新聞編集長談では、①費用が高額②フリースクールが足りない③フリースクールにスティグマがあるというのが理由ですが、この実感値で語られた言説を裏付ける統計データは、存在していません。
学校に行かない子達の2%のフリースクールの業界団体が発信媒体を運営しているというだけで、その団体が不登校の代表の様に不登校を代弁し、大手メディアや放送が彼らを不登校の代表として扱っています。
インターネットのない時代、不登校新聞が唯一の不登校の内情を伝える当事者媒体であった歴史は、尊重しておりますし、黎明期を支えたのは、間違いなく彼らです。その点は本当に尊敬しています。
時代は変わり、ここ20年で不登校の子どもの環境は、インターネット、SNSによって激変しました。学校に行けない子、行かない子、辛い子が相互に繋がり、保護者の自助コミュニティも発展し、ホームスクーラーのコミュニティも多様に分岐しています。インターネットで海外のホームスクーラーと繋がる子たちもいます。あえてフリースクールを選ばない子たちの存在があります。
むしろ反省すべきは、いまだに当事者についての情報元を不登校新聞のみに依存している放送、出版、大手新聞社の取材力不足です。大手フリースクール団体は、映像を提供するし一般メディアにとっては、確かに便利な存在と言えるでしょう。
しかもフリースクール団体代表は、秘密裏に教育機会確保法の中身をフリースクール団体へ税金を流し込むルートを作ることに力を入れています。この内容は、一般の不登校家庭の意向とは乖離しています。利用率2%のフリースクールに税金をかけて、フリースクールを選んでいない98%の子どもをフリースクールに行かせよう、フリースクール作成の個別指導計画に従えというのは、明らかに無理があります。ホームスクールが合う子どももいるし、フリースクールではない塾という形式が合う子も、そもそも集団が無理な子も、公共交通機関を利用出来ない精神状態な子もいます。個別指導計画についても、適切な内容を誰が作成可能なのでしょうか。個別指導計画作成のために面談を求められる子どもたちのことを丁寧に考えていますか。
不登校で苦しむレジリエンスが低い子は、部屋から出られない。医療にさえも繋がれないのです。人間そのものに不信感があります。学習意欲も他者と繋がる気力も失っている子もいます。寝床からうずくまって動けない子もいます。マスコミから取材依頼があっても、一切受ける気力も体力もない。困難なケースは、一家離散や家庭崩壊に至っています。
不登校の子どもたちは、とても多様。フリースクで希望が持てる子もいるしホームスクールで伸びる子もいます。
近年学校以外の居場所は、確かに広がっています。
視点を変えると、学校が子どもを押し出してばかりいるのはなぜでしょう。
学校システムに問題があるのでは?
不機嫌で子どもを忖度させる教員、面前DVの様な指導は許されるのですか?学校の息苦しさは改善しないのですか?現在の多くのマスコミによる不登校報道には、この視点が決定的に足りないのです。
最後に、フリースクール出身者の方から頂いた、不登校保護者会の一部のツイートへのご批判について、お詫び申し上げます
不登校の子をどう支援して行くかで大人同士でも政策的な対立があるのは事実ですが、フリースクールに通う子の人格や態度に苦しさの序列をつけることは許されません。
不登校保護者会は、皆様からの忌憚のないご指摘・ご批判を真摯に受け止めて、今後の活動に生かしていけたらと存じます。
引用文献
Lösel.F.,'Resilience in childhood and adolescence',Children World wide,21,pp.8-11,1994.
Pines,M.,'Super-kids', Psychology Today, pp.53-63,1979.
Wolin,S.J. & Wolin.S., "The resilient self,How survivors of troubled families rise above adversity", New York, Villard Books,1993.