不登校保護者会

不登校の子どもを育てる保護者の会です。

不登校報道についてのお願い

 

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卒業式・終業式の季節になりました。

不登校、登校拒否で式に出ないことを決めたお子さんもたくさんいます。

新年度・新学期に新しい環境になり、連休から梅雨も敏感な子どもにとって辛い日が続きます。そして夏休み。オリンピック・パラリンピック後、毎年恒例になってしまった不登校に関する報道のピークがやってくると予想されていることについて、当事者である子どもたちは不安な気持ちでいます。

そこで、不登校の子どもを育てる保護者として、お願いがあります。

  1. 子どもの気持ちに寄り添った報道をお願いします。
  2. 学校ムリならここあるよ一辺倒の報道はやめて下さい。
  3. 逆転人生やヒーローばかりを取り上げないでください。
  4. 学校も居場所も安全で安心できる場所に変えていきましょう。
  5. 学校の息苦しさ、理不尽を改善することが急務です。
8月31日報道はまだまだ先とお考えの記者さんも多いと思います。
しかし、当事者である子どもたちは一年中、生きることに悩み続け、自分に向き合い、学校や居場所のことを考えながら、年がら年中敏感になっています。
8月31日ばかりに目を向けないでほしいこと逃げていいよだけじゃないことを伝えたいのです。
学校に行けないなりにも学校が大嫌いなわけではなく学校とのつきあい方に柔軟性を持たせてもらえたら助かる子どもも多いことを知って下さい。学校以外の居場所で輝きを得る子もいれば、自宅から出られない子、学校に行きたいけど行けない子など多様です。
学校無理ならフリースクールに行けばいいじゃないと多くの方は考えるのですが、そうじゃない現実があります。

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 1.子どもの気持ちに寄り添った報道をお願いします。

昨年、報道機関として初めて、子どもの気持ちを丁寧に考える記事が出ました。

www.asahi.com

 記事のデータからもわかるように、学校に行かない子の9割は自宅にいます。

自室から出られない子もたくさいます。

 記事内のグラフにあるように、著名人の体験や応援を求める声は全体から見てもごくわずかです。しかしながら、例年テレビや新聞は著名人のエール記事を連載していて、当事者である子どもからは違和感を訴える声が上がっています。

記事を担当した記者の編集後記にあるように、社会が変わること、学校が変わることが子どもたちの願いです。

 

記者編集後記から引用

◇しんどかったら学校を休んでもよい。でもこのしんどさを我慢できなければ社会で通用しない。「じゃあどうしろって言うんだ!」。取材を通して聞こえたのは、子どもたちの悲痛な叫びです。国は従来の学校復帰を前提とした不登校支援を見直しました。でも子どもたちは、不登校の先にある社会を信用できないでいます。多様性を認め合い、自分らしく生きられる社会をつくる責任は大人にある。その思いを新たにしています。(山根久美子)

◇取材を通して聞こえてきたのは、「社会や学校にある生きづらさの根本を変えてほしい」という声でした。苦しい時間に寄り添うだけでは不十分だと突きつけられたように感じます。「ブラック校則も生きづらさの要因の一つだ」と指摘する識者もいますが、校則を巡る動きは、「生きづらさ」が言語化されたことで社会が動きだした事例だと思います。子どもたちが何に生きづらさを感じているのか、大人は誠実に向き合う必要があると感じます。(金沢ひかり

 

 

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 2.学校ムリならここあるよ一辺倒の報道はやめて下さい。

昨年、一昨年あたりから特に放送も新聞も

「学校ムリならここ(フリースクール)があるよ」一辺倒の報道が続いています。

不登校原因はとても複雑でひとりひとり違います。繊細な子どもたちへの取材も大変だと思います。しかし、学校以外の居場所に行けない、自宅から出ることが出来ない子が9割超である事実を知って下さい。

 

フリースクールを選ばない子が9割超である理由を不登校新聞社が分析(高額、数が少ない、スティグマ)していましたが根拠となる具体的な統計データを示していません。

不登校のほとんどがフリースクールに通わない3つの理由 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

文科省が学校に頼らない調査を実施中ですが新自由主義改革政策に沿ったデータを作り込んでくる可能性は否定できません。

 

不登校保護者会では、不登校報道へのお願いを昨年も行いました。

詳しくは以下のリンクをご参照下さい。

 

https://hutoukouh.hatenablog.com/entry/2019/08/01/120302

hutoukouh.hatenablog.com

 

家庭支援、保護者支援が足りていません。

不登校の子どもには思春期の問題、軽度、グレー域の発達障害の問題を併発するケースも少なくありません。

家庭で難しくなった場合に、行政の家庭支援サービス児童相談所、自助団体の相談を頼るしかないのが現状です。

 

不登校保護者会でも毎月1回の茶話会が保護者支援の場となっています。

hutoukouh.hatenablog.com

 

家庭・保護者支援がまだまだ足りないことや児童相談所保護を頼った場合、保護所で不適切な対応をされ、さらに心に傷を負うケースも続いています。

 

 

 

精神疾患の休職率 児童福祉司、教員の4倍 毎日新聞調査 - 毎日新聞

mainichi.jp

 児童相談所(児相)を設置する全国70自治体のうち4割強が、虐待に遭うなどした子どもを保護する一時保護所の児童指導員や保育士に対して、子どもの行動観察とその記録方法についての研修を行っていないことが毎日新聞の調査で判明した。国は一時保護所職員の研修の内容や時間数について定めておらず、自治体間で対応にばらつきがあることが浮き彫りになった。

 

児童一時保護所、4割研修せず 行動観察・記録、国指針なく 70自治体調査 - 毎日新聞

mainichi.jp

保護所での問題も解決できないままです。

児童相談所:一時保護長期化 2カ月超え287件 横浜市17年度 /神奈川 - 毎日新聞

mainichi.jp


AIでは解決できるのでしょうか。ひとりひとりの存在を大切に対人間の信頼関係を構築することが大切なのではないでしょうか。

児相にAI 虐待の深刻度など分析 三重で実証実験 全国初 - 毎日新聞

mainichi.jp

www.asahi.com

 

 

学校を変えることについて考える報道をお願いします

昨年は大々的に学校ムリならここあるよキャンペーンがNHKを中心に行われましたが、元NHK記者で大阪日日新聞論説委員の相澤冬樹記者と西日本新聞社の金澤皓介記者は、

学校が変わらなければ苦しむ子が増え続けるという事実に目を向けて報道されました。

 

news.yahoo.co.jp

 

 

 

多くの不登校報道では、学校の理不尽や息苦しさを改善せずに、学校以外の居場所を民間で設ける民間企業に税金を注ぎ込む教育の新自由主義改革そのままをキャンペーンする報道が続きました。

 子どもの夏休み明けの自死は減らないままです。

www.mext.go.jp

 

昨年に引き続き再度のお願いになりますが

夏休み終わりの不登校報道を考えなおして下さい。

一度学校で被害に遭った子どもたちのPTSDは長期間心と体を蝕みつづけます

回復に数年、十数年かかるケースも少なくありません。

学校は絶対的に安心・安全でなければいけない。

学校の理不尽息苦しさをなくすためにどうしたら良いかを一緒に考えましょう。

危険で苦しい空間のままでは現在22万人超の不登校の子どもはさらに増え続けます。

 

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3.逆転人生、ヒーローばかりを取りあげないでください。

レジリエントな子どもばかりではありません。学校で傷付いた子たちは、まず心の休養が必要です。不登校はひとりひとり全員違います。ありのままのその子の存在が認められることこそが必要なのです。また才能、ギフテッド賛美は、優生思想に繋がります。

昨年の元農水次官による長男殺人裁判において母親による裁判内での証言「才能があれば良かった」は、多くの不登校家庭が重く受け止める言葉でした。才能があろうとなかろうと子どものありのままの存在を認めていくことが希望に繋がります。

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4.学校も居場所も安全で安心できる場所に変えていきましょう。

不登校の最大の要因は、学校で子どもの人権が無視されていることです。

 落ちこぼれ、不登校の最大の原因は教室の“同質性”にある|文藝春秋digital|note(ノート)

bungeishunju.com


www.bbc.com

 

学校が安全ではない

東京都の公立小学校で起きたスクールセクハラから不登校になった子どもがいます。

明らかな痴漢行為を行う教員に刑法が適応されない矛盾があります。

自身が被害にあったり、被害を目撃し不登校になる子どもたちも少なくありません。

子ども同士の被害も多発しています。

公訴時効、性交同意年齢、地位関係を利用した行為の強制、不同意に関する解釈など性暴力に関する問題が学校の中にもあります。

 

スクールセクハラ裁判

いちご大福さん@masaki_dokkili 

twitter.com

いちご大福さんの裁判(次回期日は2月28日11時東京地方裁判所)

blogos.com

 石田郁子さんの裁判(次回期日は5月14日東京高等裁判所)

石田郁子さんが受けたスクールセクハラ被害

news.yahoo.co.jp

twitter.com

hutoukouh.hatenablog.com

 

学校外の居場所も安全が守られていない

2020年2月3日朝日新聞で報道された通り、性暴力が起こりうる環境が改善されたようには見えません。

www.asahi.com

 

このような性暴力は子どもが関わるあらゆる場所で起こり得ることであるのに未だに具体的で効果のある対策が示されていません。  

 

 

 

 

 

学校でいじめや理不尽な対応で不登校に至るケースも多いのですが、教員からの性暴力で不登校にさせられるケースも問題になっています。

不登校につながるのは学校で子どもの人権が守られていないことが要因であることも指摘されています。

 

 

 

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5.学校の息苦しさ、理不尽をなくすことが急務です。

不登校の子どもたちの声を集めました

  • 不登校になると来なくていいよと言われ、学校とのつながりを失う。見捨てられたみたいに。(東京都小2男子)
  • 同調圧力とか内申のために先生に取り入る行動が耐えられない。同級生が先生に気に入られるために、うらおもてのある人間になっていくのを見るのが辛い。(東京都中3女子)
  • とにかくみんなと同じで悪目立ちしないように生きるのに疲れてた。(東京都小学5年男子)
  • 学校で勉強する意味を感じない。人間の悪意ばかりが育つような場所だから。(神奈川県小学6年男子)
  • 先生がとにかく忙しそう。良い先生がやめていく。怒鳴ったり威嚇する先生が増えてきて尊敬出来ない。(東京都中学1年女子)
  • つらい時の記憶がない。だけど給食で嫌な思いをした記憶だけはある。自分の力で就職したことについて、応援してくれた人たちには本当に感謝している。それまでに「行きたかった」という気持ちが保障されたからこそ、「行けなかった、行かなかった」という自分の行動については後悔がないと言える。(長野県大人不登校時代を振り返って)

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編集:不登校保護者会事務局 メンバー+幼児からの性教育資料読書会メンバー

hutoukouh.hatenablog.com

 

 文責:不登校保護者会事務局 郡司真子