夏休みの終わりに子どもを死なせないために
夏休み終盤から9月上旬に
自死する子どもをなくしたい。
登校しなければならないことへの恐怖や絶望、自己肯定感が落ち込んでしまう状態を軽減するには、大人には何ができるでしょうか。
・保護者が出来ること
・学校にお願いしたいこと
・報道機関に考えて頂きたいこと
不登校保護者会として、それぞれの大人の皆さんにお伝えしたいことをまとめました。
不登校の子どもを育てる保護者の皆さんへ
まず、学校へ行くことは、絶対に必要というわけではないのです。観点別評価によって意欲・態度まで点数化されたり、『いじめの構造』(内藤朝雄、講談社)・『オカルト化する日本の教育』(原田実、筑摩書房)に代表されるような奇妙で息苦しい風潮が、いまの学校教育には蔓延しています。
子どもがある日、急に行けなくなったとしても、責められないほど学校は奇妙でおかしいところです。
学校自体がとても奇妙で危険な場所かもしれないことについて、こちらが分かりやすく説明されています。
不登校「先生が原因」 認知されず ―学校調査と本人調査のギャップから考える(内田良) - Y!ニュース
ある日急に子どもが学校へ行けなくなったとしても、それは今まで少しずつ真綿で首を絞められるように苦しさが積もり積もって遂に限界が来たのであって、昨日今日の出来事は、ほんのきっかけに過ぎないのです。
これについて、不登校保護者会のブログをご参考になさって下さい。
保育園幼稚園時代にはひとりひとり個性を大切に育てられてきたはずが、就学とともに多くの学校で管理教育、同調圧力、理不尽な学校カースト、教員による吊るしあげ指導に飲み込まれて行きます。
公立中学では、内申によって教員が将来を握っているかのように脅迫されたり、部活で罵倒されることからの指導死に対しても、有効な解決策が示されていません。
安全で多様性が尊重される通常級なら、問題なく通えるはずの発達凸凹、グレーゾーン、LD傾向の子どもたち、授業が退屈に感じるほど理解力がある2Eギフテッドの子どもたちは、現在の多くの公教育の息苦しさにより、登校が辛くなりがちです。
学校へ行かなくても我が子には価値があることを子どもに伝え続けることがとても大切です。
「夏休み明けには学校行くよ」と、子どもが言ったとしても、無理しているかもしれないので、大喜びしてみせてはいけません。
実際、行けなくても叱らないことも重要です。
休養が必要な子は十分に休むことが優先です。このことは一昨年に施行された教育機会確保法にも明記されています。
この状態の子には何も強要しないことが重要です。図書館や動物園に行けばなどの声かけも効果がないばかりか、心理状態の悪化を長引かせることもあります。
好きなことを思い切りさせれば自己肯定感が取り戻せて、いつか自分で勉強し始めるというアプローチがあり、不登校の家庭に広く浸透するようになりましたが、短期間でうまく回復出来る子もいれば、回復に繋がらないまま精神状態が悪化してしまうケースもあります。
回復期の子やレジリエントな子の場合は、できる範囲で学校以外の社会とつながる方法を模索するのは効果があります。
ここ数年来、「死ぬくらい辛ければ学校から逃げていい、死ぬくらい辛い子は図書館へ動物園水族館へ」との理解は定着してきたようですが、逃げた先が本人と家族の自己責任に丸投げされているのが現実です。
夏休みが終わる時期、学校へ行くのが怖くて死を思う子は無くしたい、生きることがまず大事。「ああ、子どもが死ななくて良かった」で、第三者は済まされますが、死なせないために親が孤軍奮闘して家族がバラバラ、貯金もなくなる、子どもは学校に行きたいような行きたくないような、モヤモヤした気持ちでずっと不満…そうさせてはいけないんです。
こうならないために早期に公共な救いがなくてはならないですが、公的支援体制の質は、自治体によってかなりの差があります。
思い切って、支援が充実している自治体に引っ越し解決に繋がる家庭もあります。
転校して回復する子もいれば、転校先でも学校に通えない子もいます。しかし、近年では不登校の子どもを受け入れている私立校、オルタナティブスクール、通信高校が多様な進学先もあるので、夏休み中に調べておくのも良いでしょう。
不登校保護者会のメンバーの進学について今後まとめてお伝えします。
不登校を経ても夢を叶えて頼もしい大人に育って行く子たちがいます。
不登校についてTwitter、Facebook、slackなどのSNSや対面で語り合う場もあります。
ホームスクーラーの輪も広がっています。
不登校保護者会の学習会では、児童精神科医とともに正しい対応方法を学んでいます。
児童精神科医井上祐紀医師がYOUTUBEで感情スキルプログラムを公開しています。
保護者の皆さんには、
とにかく無理に登校させない。
学校行けなくても叱責しない。
夫婦喧嘩を子どもの前でしない。
これらを最低限、徹底していただきたいです。
学校関係者の皆さんへ
夏休みの宿題提出を絶対に無理強いしないで下さい。
「宿題や提出物を提出しないと進学させない、できない」などと言わないで下さい。
「学校に行かなかったらお前の人生は終わり」などという決めつけもやめて下さい。
「学校来てない奴に行ける高校なんてない」という誤情報を流さないで下さい。不登校でも進学出来る高校、大学はあります。
やっとの思いで登校した子どもを別室から教室に無理に誘導したりしないで下さい。
部活も強要しないで下さい。
内申で子どもをコントロールしようとしないで下さい。
学校の日頃の指導が子どもを死に向かわせていないか、丁寧に考え直して頂きたいのです。
報道関係の皆さんへ
傾聴だけの企画やぼんやりした喋り場を提供してガス抜きして「なんかいい雰囲気」になって終わり、支援に繋がらない自己満足な放送企画は要らないです。ジャーナリスティックな視点で報道して下さい。
「死にたいと思うくらいなら図書館、動物園、水族館へ逃げていいよ」の後がおそろしく過酷であり、逃げた後を自己責任と見捨てている社会を変えなければ何も変わりません。
このままでは、死にたい子、心中を企図する家庭、子どもを殺してしまう家庭が減るわけありません。
そもそも子どもを息苦しくしている学校を変えなければならないです。
当事者や家族を公教育から追い出し利権ビジネスに売り渡すのではなく、息苦しい子どもを排除する学校自体を変えないと死にたい子は減らないです。
不登校保護者会のメンバーが、「学校がつらいなら逃げてもいいよ」の後の問題について、以前から以下の通り指摘しています。
そして何より、(放課後登校など温情としてカウントされる出席日数を除外しても)毎年十万人以上の不登校者と、多くの自殺者を出している学校制度そのものを、客観的な根拠(エビデンス)に基づいて根本的に見直すべき責任が、政府にあります。そして報道機関には、こうした責任を、客観的なエビデンスに基づいて追求してほしいものです。
不登校について相談出来る公共機関は増えましたが、まったく救いにもならない、役に立たない形だけの相談機関しかない自治体もあります。自治体により不登校対応は雲泥の差です。
多くの逃げ場や居場所が出来ていますが、不登校の子どもには、起き上がることも自宅から出ることさえも難しい状態が長く続く子の方が多い事実を知って下さい。
フリースクールなどに通える状態の子は、ほんの僅か数%しかいないという調査があります。
これまで報道各社の皆さんがフリースクール業界団体だけを不登校の代表として安易に取材することに、不登校保護者会は常々疑問を感じています。
フリースクールなどに通うことではなく、ホームスクーリングを希望していたり、子どもを排除している学校自体が変わることを望んでいる子も多いのです。
教育機会確保法が施行され、「不登校児童生徒の休養の必要性」が謳われていますが、文部科学省の専門家会議ではこんな意見も出ています。
取材していると、最近本当によく聞くのは、先生から(略)学校に行かなくていい権利があるんだよと言われて、子供は学校に行きたいのに、わざわざ学校から行かなくていいんだよと言われる。(略)子供からしたら、スパンと切られたみたいな印象を受けるという話を本当にあちこちでよく聞く。
これは、繊細な子どもは学校に来なくていいよという排除に他ならないです。
教育機会確保法の附則によれば、今年度に施行状況を見直して必要な措置を講ずることになっています。
しかし、諮問会議には財政支援の対象となりうる受益業界団体も参加している一方で、不登校の当事者の声が法律に十分反映されているとは言えない状況があります。見直しを行う検討会議の議事録はなかなか公開されず、当事者が何も知らされないまま法律の中身が秘密裏に決められているのではないか、との疑念が拭えません。
社会の木鐸として、法律の見直し過程を調査報道し、学校の息苦しさの本質をえぐり出し改善を求めるのが、報道機関の役目なのではないでしょうか。